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Japan Brief
◎ 波紋呼んだ日本国債の格下げ
[社会] 2002年6月14日
◆政財界、“ボツワナより下”に強い疑問
米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月31日、日本政府が発行する円建て国債の格付けを2段階引き下げた。それまで最上位から4番目の「Aa3」だった格付けは一気に「A2」まで下がり、既に先進国では最下位だった格付けは格下げの結果チリやボツワナより低位に位置付けられ、イスラエルやポーランド、南アフリカと同等になった。ムーディーズでは格下げの理由として「現在の経済政策では政府の債務状況の悪化に歯止めがかけられない」ことを挙げている。格付けの見通しは「安定的」で、一連の格下げは一段落した形。また、海外で発行された日本の国債に関しては「Aa1」、見通しも「安定的」に据え置いた。ムーディーズは今年2月、日本国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表し、景気や財政状況などをもとに検討を続けていた。
格下げに対して塩川正十郎財務相は「格付けが下がっても、円の値打ちは上がっている。市場はムーディーズの評価を参考にしていない。政策の変更はしない」と強い不快感を表明した。経済界も「日本経済のファンダメンタルズからみて、今回の格付け評価には極めて疑問を持っている」(日本経団連の奥田碩会長)などと疑問を呈している。
◆ムーディーズ、財務省の批判を完全無視
2月にムーディーズが日本国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表した後、財務省はムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチの外国格付け会社3社あてに「意見書」を送付した。意見書は、日本の世界最大の貯蓄超過、経常黒字の大きさなどファンダメンタルズの強さを考えれば格付けは低すぎ、また客観的基準を欠いており、もっと具体的・定量的に説明すべきだという内容だった。国債の格付けが下がってリスク資産とみなされれば日本のカントリーリスクが大幅に悪化し、日本の銀行や企業に対する海外当局や投資家の評価が急低下する可能性がある。その結果日本企業の格付けが下がれば、企業の資金調達に悪影響が出かねず、こうした責任を政府に押し付けられてはたまらないと、財務省が反撃に出た格好とする向きもある。
財務省の抗議にもかかわらず断行された格下げに対し、「構造改革や不良債権処理が進まない日本への欧米の冷ややかな視線を反映している」との受け止め方がある一方で、政府の景気底入れ宣言にみられるように景気が回復局面に入ったとの見方が強まる中、格下げが妥当な判断かどうかは専門家の間でも意見が分かれている。発行体の依頼がないまま、独自に格付けするムーディーズの「勝手格付け」手法を問題視する意見もある。
格下げはある程度予想された事態だったことや、格付けの信頼性に疑問の声があることなどのため、市場の反応は冷静なものだった。格下げが伝えられた5月31日午後の東京債券市場では、長期金利の代表的銘柄である新発10年物国債の流通利回りは前日比0.005%下落し、格下げにもかかわらず国債価格は上昇した。東京株式市場では、東証株価指数(TOPIX)の終値が前日比1.22ポイント低下と小幅な値動きにとどまった。東京外国為替市場でも、格下げを受けての目立った動きは見られなかった。
◆反論は財政の効率化で―新聞論調
ムーディーズの日本国債格下げについて、日本経済新聞社説(6月1日付)は「格下げという“雑音”に通り一遍の反論をしてすませるのではなく、これを警鐘として受け止め、『日本病』に正面から取り組む。市場が日本政府に求めているのは、そうした前向きの姿勢であろう」と、政府が構造改革や不良債権処理に取り組むよう求めている。朝日新聞社説(同)も「政府はまず、残高が膨れ上がる一方の国債をどうやって制御可能な範囲内に抑え込んでいくのか、その計画を示すことだ。それが出来れば、日本国債の格付けは、確実に上がる」と指摘。産経新聞社説(6月2日付)も「費用対効果に見合う公正で効率的な財政運営こそ、国債格下げに対する最も説得力ある反論材料になろう」と論じている。また、東京新聞社説(6月1日付)は「政府が財政再建に努力するのは当然だ。だが、格付けを『天の声』と受け止める必要もない。政府も格付け会社も、公開で大いに論争すればいい。財政の透明性が向上し、投資家の判断にも役立つはずだ」と、格付けを今後の経済政策や投資家のために活かす必要性を強調している。
一方、毎日新聞社説(6月2日付)は「国債の格付けを過大視する必要はないが、過小視もいけない」と主張。今後の国債発行に支障が出ることはないものの、「民間企業も経営の改革を通じて、高い格付けを取得できるだけの強い財務体質を身に着ける必要がある」と、国債格下げによって悪影響を受ける可能性のある民間企業の経営努力を訴えている。
(了)