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ブリーフィング・レポート

「日本のマクロ経済見通しFY2004-05 ―製造業の復活:わが国は長期不況から脱却する― 」

みずほ証券会社 チーフエコノミスト
佐治 信行

[経済] 2004年2月18日

 その中で注目すべき動きが個人消費に出てきました。日本の個人消費、家計部門の消費支出を2つのグループに分けてその動きを追うと、世帯主が中小企業に勤めている家庭での支出が昨年10月以降、前年対比で5%増という高い伸びを示し始めています。この大企業就業者の世帯の中で特に消費を昨年10月以降増やしている世帯を年齢別に見ると、30代、40代、それから昨年12月からは20代の若い人達の消費が急速に増えている特色があります。更に、消費を増加している彼らの世帯で増加している消費項目をデータでチェックすると、耐久消費財を中心とした増加が目立っています。また、耐久消費財の購入単価は明らかに昨年秋以降上昇しております。
 こうした動きの背景には理由が3つあると思います。1つ目は、製品の高度化を背景にした大企業の収益改善による雇用回復。2点目は、1995年から96年に購入された耐久消費財が、8〜9年のサイクルを経て、丁度大型の買い替えの時期が来ていること。3つ目は、日本の年功序列制が崩れ始めてきていることで、若年層の消費が活気づいていることです。
 雇用回復を受けて賃金上昇が見られる年齢層が30代に集中している一方、50代は大幅に低下しています。最近の興味深い例を挙げます。昨年10月に発売されたトヨタのクラウンは、日本で大ヒットしており、若い人が購入し始めています。これは、今申し上げた消費の構造的変化の最も典型的な例です。クラウンはトヨタの最高級車の1つで、従来は、年功序列システムの成功者のみが購入する権利を持った車でしたが、今や購入層は30代後半にまで下がっています。クラウンは従来、600万円が購入中心価格層と聞いていますが、新型クラウンは本体価格400万円を切っています。クラウンの価格だけを見れば、消費者物価指数(CPI)の低下現象が起きています。しかし、今まで300万円代の車に乗っていた人が400万円のクラウンを買っているので、消費者から見れば、購入単価が100万円一気に跳ね上がっています。ですからエコノミストはCPIを見て、「価格低下だからデフレだ」と言いますが、実際はデフレ現象が起こっている訳ではありません。購入者から見れば価格上昇ですから、ここが大きな変化だと思います。
 テレビもそうです。薄型液晶ディスプレー(LCD)のTVが今や30インチで30万円を切り始めています。ですから、LCDTVだけで見るとCPIの低下ですから、エコノミストは皆、デフレだと言います。しかし、今までブラウン管型(CRT)TVを18〜20万円というCRTとしては高額な価格で買っていた人は30万円のLCDTVを買い始める。20万円が30万円にシフトし、購入単価は大幅に上昇する。この現象が果たしてデフレでしょうか。
 そこで日銀の金融政策を見ます。日銀は、コアのCPIを基準にした金融政策を実行しています。すると今のCPIは統計の捉え方の構造上、テクノロジー・ディスカウンテッド・プライス・インデックスですから、技術革新が進むほどCPIが下がる特色を持っており、下がるに決まっている物価指数を日銀は金融政策の基準にしています。ですから、景気が回復し、日銀は果たしてどうやって金利を引き上げるのか、チャンスはどこにあるのか疑問です。従って今回の景気回復の強さは、民需主導、つまり日本の企業が自助努力で実現したことにあります。言い換えれば、政府の公共事業増加政策や減税をきっかけに回復したパターンではないし、今回の景気回復が、政府、日銀に阻止されるリスクはありません。
 最後に簡単に追加的に自己紹介をさせていただきます。私は12年間、弱気な見通しを続けてきた代表的な日本のエコノミストの一人です。しかし今回、楽観的な見方に転換した最大のポイントは、日本の製造業の自助努力、構造改革によって競争力が復活し始めていることに関心を持ったことがきっかけです。我々の日本経済の見通しは強気です。